プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「――わっ!」
「日菜子さん!」
私の肩先をかすめたのは祐希の手か。
今度はウエスト付近を強い力で引き寄せられた。
それでいったんは体勢を持ち直したものの、足をかばったせいでその場になだれ込むように倒れた。
――祐希もろとも。
床に打ち付けた身体の痛みを気にしている余裕はなかった。
祐希の顔がすぐそばにあったからだ。
その距離、わずか数センチ。
いくら照明が消えているとはいえ、この近距離で見えないはずがない。
すっかり闇に慣れてしまった目が恨めしい。
その上、抱き合うような体勢の私たち。
祐希の背中に回った腕を動かそうにも、金縛りにでもあったかのように硬直したまま。
一度大きく目を見開いてから、祐希がゆっくりと瞬きをする。
スローモーションでも見ているようだった。
驚きの色が消え、真っ直ぐ私を見据える。
なにか言いたそうに瞳が揺らいだ。
しつこいようだけれど、雪さんのせいだ。
雪さんが変なことを言うから、おかげで私の心臓がドックンドックン波を打っているじゃないか。
「日菜子さん……」
吐息を感じる距離というものを初めて知った。