SaltyTriangle*
楓はほんの15分足らずで、お風呂から上がってきた。
「はやっ…くない?」
お父さんがたまに着ているパーカーとスウェットを見事に着こなし、まだ髪から滴り落ちる雫を肩にかけたタオルで拭う。
私、部屋着をあんなにオシャレに着こなす人初めて見た。
楓はもちろん着ているだけなのだが…
お父さんのスウェットがオシャレに見えてしまう。視力落ちたかもしれない。
「お風呂いただきました。ありがとうございます。」
テレビの前に座る私をスルーして、キッチンに立つお母さんに声をかける楓。
楓の声にパッとこちらを振り向いた、お母さんの顔は明るい。
「あらっ!ちゃんと温まった〜?楓くんは部屋着着ててもイケメンね、母さん照れちゃう。」
楓を前にしてなぜか女を取り戻すお母さんが、私は不安で仕方ない。
はぁ、と軽くため息をつきながら頭を抑える。
「梓、さっさと風呂行ってきて。もう暖房切るから。」
隣に座って一緒にテレビを見ていた葵が、なんだか突然冷たい。
無駄な電力使わせんじゃねーよ、っと言うような目。
実の姉に向かって、なんていう目を向けるんだこの子は。
お姉ちゃん悲しい。
なんてこと言ったらどうせ蹴り飛ばされるし、すでに用意してあったお風呂セットを持ってさっさと居間を出て行く。
「あ、楓くん。夕飯食べてくでしょう?お父さんの分も用意しておくから、帰りが遅いようなら持って帰ってね。」
「わざわざすいません。助かります。」
そんな会話がキッチンから聞こえた。
楓のお父さんは、楓が小学校を卒業してから残業が多い。
おそらく幼い楓のために仕事にブレーキをかけていたんだろう。
かといって、中学生になったらもう大人ってわけでもない。
楓のこと、ちゃんと考えてくれる人ではあるし、私は嫌いじゃない。
でも、やっぱり寂しい思いをしてきたんだろうな。
それはきっと、お互いに。