SaltyTriangle*
「あれ、楓が運んでくれたの?」
よく考えたら、葵は私と同じくらいの身長だけどさすがに持ち上げられないだろうし、お母さんは論外。
楓以外ありえない、よね。
「まーな。」
「ごめん、ありがとう。」
「…重かった。」
「なっ……」
予想外でもあり、予想通りでもある言葉。
思わず、素で真っ赤になって膨れてしまう。
お、ちょっと可愛らしくできてるんじゃないか。なんて思ったり。
大体、これでも平均体重より軽いんだから。
人1人なんて、軽いって感覚の方が珍しいだろうけどさ。
「嘘だよ。なんだ、らしくない。いつもなら言い返してくるくせに。」
すっかり自然乾燥されてボサボサの髪を、楓はさらにぐしゃぐしゃにしてくる。
「ちょ……強い強い、力加減間違ってる、絶対!」
「ちょっとそこー、戯れてないでご飯食べるよ。」
私たちの様子を食卓から見ていたお母さんが、呆れた顔で声をかけてくる。
葵も同じように席に着き、冷めきった目でこちらを見ていた。
あの目は絶対私に向けられてる。
だって葵が楓をあんな目で見るはずないもの。
「はーい。」
返事をしてからパッと立ち上がる。
そしてフラつく。立ち眩みだ。
そんな私を、隣で同じように立ち上がった楓が素早く支えてくれた。
「…ありがと。」
「無理すんなよ。」
そんな様子をまたまた見ていたお母さんが、少し興奮気味に口を開いた。
「やだー、楓くんてば超イケメン!ねぇ、葵!あんたもあんな風にスマートなイケメンになりなさい。」
言いながら葵の肩をバンバン叩いている。
その度に葵の上半身はグラグラ揺れていた。
そもそも、葵がイケメンに育つことが大前提なところが親バカだ。
「いいな、この家やっぱ賑やかで。」
楓が私の隣で楽しそうに笑うのを見て、わたしも笑った。
「楓がいると、いつもの数倍賑やかだよ。」
そしてまた、2人で笑う。
食卓には、多分楓がいるからだけど、いつもより豪華な夕飯が並んでいた。