嘘つき天使へ、愛をこめて

「正直なところ、早々に逃げ出すんじゃないかって思ってたんだよね」

「逃げる?」


「うちに転校してきたやつは大抵、二日三日もしないうちに学校には来なくなるのに、サリは俺たちを怖がることなく、ひとりいつも堂々としてる。俺たちでも驚くくらいにね」


「そんなこと、ないと思うけど」


怖いとは思わない。

でも、警戒心は解かないつもりだった。


そもそもあたしだって、そう遠くないうちにあの学校から消えるわけなのだから、いついなくなったって同じ。

これはあたしの最後の高校生活。

自分で決めた一ヶ月の間は、なにがあっても通うと最初から決めていた。


「良い意味で、サリは俺たちの期待を裏切ってくれる。だからサリ、うちに来いよ。悪いようにはしないから」


ひかれないわけでもない。

一番最初に、誘われた時から。


でもあの時と今では、明らかに雅の態度が違う。

柔らかくなったというか、あたしに対しての刺々しさが薄らいだというか、妙な感じだ。


恐らく雅の言葉に嘘はないし、幹部の皆もあたしがあの屋敷で暮らすことに対しては賛成なんだろう。


どうして、なのかは分からないけれど。
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