嘘つき天使へ、愛をこめて
「それぞれ、まあ理由はあるだろうが。俺の場合は、単に放っておけないからだな。こんな粗末な生活をしているのを見たら、もう他人事とは思えねえ」
「お母……」
「俺は母ちゃんじゃねえけど。それでもな、うちにはワケありが多い。中には族なんて似合わないような奴だっている。そんな奴らを預かってんだ、幹部としての責任は常に背負ってる」
柊真の声は真剣だ。
玲汰が眠たそうにうとうとし始めた。さすがにもう限界らしい。
「俺らはみんな、家族なんだよ」
「家族……?」
「ああ。まあ口で説明するのは難しいが」
柊真は立ち上がると、あたしの前にしゃがみこんだ。
そして、むしゃくしゃに頭を撫でられる。
「来いよ、うちに」
「そーだよ!カモンサリちゃん!」
「……柊真の作る飯は上手いぞ」
「……スピースピー」
寝ている玲汰を除いて、柊真、唯織、櫂がそれぞれに声をかけてくれる。
なんで、そこまで……。
きゅっと唇を噛み締めながら、雅を見る。
雅はあたしの動揺した顔が面白かったのか、フッと笑って頷いた。
「いいんじゃない。たまには人を信じてみても。俺が言えたことじゃないけどさ」
「雅……」
「それに、俺もサリには興味がある」
一体なんの、と聞き返そうとしてやめた。
こんなに歓迎ムードを出されていたら、断るものも断れない。
あたしは小さく溜息をついて、唾を飲み込む。
「……そう、ね。たしかにあたし的にも助かるけど、一つ確認してもいい?」
「ん?」
「あたしは、姫にはなりたくないの。自分の身は自分で守るし、仮になにかあった場合にあたしが消えたとしても、そのまま忘れてくれていい。存在そのものをね」
「それは、どうしても?」
あたしは深く頷く。