嘘つき天使へ、愛をこめて


サリは、俺と目が合った直後に倒れた。

受け止めたその身体は、まるで氷のように冷たくて。


俺はサリに口付けた。

サリは笑った。

そして、か細い声で『すき』と言った。


もう、細かいことなど思い出せない。

俺に残っている記憶はそれだけで、その後どうやってあの倉庫から病院へサリを運んで、緊急手術となったのか覚えていない。


ただ大翔さんは、話してくれた。


サリが脳に爆弾を抱えていること。

それは亡くなった母親の咲妃さんと同じものだということ。

ただし、サリの場合はぎりぎり手術が可能かもしれないということ。

その場合、高い確率で記憶障害や後遺症が残る可能性があるということ。


……もし手術を受けなかった場合、サリの命は残り一ヶ月だろう、ということも。


どれもとてもその場で受け止めきれるようなことではなくて、俺と一緒に聞いていた柊真や櫂でさえ、言葉を失った。
< 184 / 225 >

この作品をシェア

pagetop