嘘つき天使へ、愛をこめて
あ、あれ?
あたしの話、ちゃんといってるよね?
その反応に今更ながら僅かな不安を覚える。
大翔が転校手続きは任せろと言っていたから、全く心配はしていなかったのに。
ぽかん、と口を開けている先生が大半の中、ひとり爽やかそうな男の先生が近づいてきた。
「えっと……雫井さん、かな?」
「はい」
良かった、ちゃんと話は通っていたらしい。
じっと先生を見つめれば、彼は一瞬戸惑ったように固まって僅かに耳を赤くさせた。
「……なにか?」
「い、や。なんでも」
あぁ、この感じ、嫌だ。
心臓がキシキシと嫌な音を立てる。
お腹の中でやかんの蓋がカタカタと音を立てるような静かな苛立ちを抑えながら、あたしは「そうですか」と作り笑いを返す。
どんなに苛立っても、こんな場所でそれを面に出すような野暮なことはしない。
何事も出来る限り穏便に。
苛立ちなんて一時の気の紛れだ。