嘘つき天使へ、愛をこめて


「あー……えっと」


「もしかして、あたしの担任の先生ですか?」


「あぁまあ、そうだな。清水翔、よろしく」


「はい、こちらこそ。あの……清水先生、一つ訊きたいことがあるんですけど、いいですか?」


「なんだ?」



気を取り直したのか、上辺面でニコッと笑った先生。


その笑顔を見た瞬間、背筋にゾワッと虫が這うような気持ちの悪い悪寒が走った。



……ああ、この人――裏がある。


直感だ。


けれど、きっと当たっているだろう。


爽やかそうな一般人のフリをしていても、心に潜む陰のオーラをこの人は完全に隠しきれていない。


いや、これがあたしではなかったら、きっと簡単にこの爽やかな笑顔に騙されると思うけれど。



「……先生」


「ん?」


「まだまだ、ですね」


「……なんのことかな」



スッと顔から笑みを消し、周りの空気が格段と冷えていくのを感じながら、あたしは怯みもせずに顔に笑顔を張り付けた。

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