嘘つき天使へ、愛をこめて
彼は物申したいというように、唯織の首根っこを摑まえてお説教をはじめた。
その様子に訳が分からず首を傾げていれば、フッと笑った雅に更に眉間をしかめる。
「なに、雅」
「いや、なんでも?」
やっぱり言動が読めない。
こんなに何を考えているのか全くわからないのは、大翔以来初めて。
雅だけでなく、この幹部の人たちも含め、警戒を強めていたほうが良さそうだ。
まったく、どうして転校早々に総長や幹部と関わることになってしまったんだろう。
もうその時点で目眩がしてくる。
1か月無事でいられる自信がない。
「……案内」
「え?」
「案内してくれるんでしょ。総長自ら」
総長と言われるのが嫌い、と言ったばかりの雅に対してどうして煽るようなことを――と幹部メンバーは思ったかもしれない。
けれど、あたしと視線を交じわした雅は面白そうに「……へえ」と小さく笑って、こちらへ手を差し出してくる。