(A) of Hearts
「ヒロをアヤに譲ってあげてよ」
「——前田さま」
「頼むよ」
前田さんは気付いている?
だからこんなに手荒い真似をしたの?
だけど落ち着いて考えてみれば舞台に出る出ないの選択権って、わたしにあったようにも思う。ゴリ押しされてもイヤだと言えばよかっただけのことだったはずだもん。
それに前田さんが出ることになったのだって、偶然といえば偶然で——。
あそこに芦沢さんがいたことだけが偶然ではない。アヤさんの肩を抱いていた。
「あのさ館野さん」
また涙が溢れ出す。
だってわからない。
どうすればいいのかわからない。
壊したくないって思っている。
そこまでしてヒロに来てほしくない。
このまま結婚してほしい。それは本心だ。
なのに好きで。
なんかどうしようもないよ。
「そうやって黙り込んで泣いたところでさ——」
「も、申し訳ございません」
「また気分でも悪くなった?」
「——いえ、しかしなぜ前田さまは、そこまでアヤさんとヒロに執着されるのでしょうか?」
すると目を細めた前田さん。
そして苛立ちを隠すためなのか逃すためなのか、それとも呆れたのか。短く息を吐き出した。
「いまなんつった?」
「え……」
「ちぃ?」
え、なに。
どうして前田さんが。
「ふうん」
わたしの反応に前田さんは、そういって腕を組んだ。