(A) of Hearts

「館野さんはヒロにそう呼ばれていたってわけか」

「あの、」

「なるほど、似ているだけではなくヒロが持ってた写真は館野さん本人だったわけだね。これはやられた。それならなおさらヒロをアヤに譲れ」


そして胸に差し込まれているポケットチーフで、わたしの頬に流れる涙を押さえてくる。


「ヒロを苦しめる。アヤまで傷ついてしまう。それから館野さんも傷つくよ。これからもずっとヒロの傍にいたいのだったら、大人しく俺の女になったほうがいいね」

「——わたしは、前田さまが好きではありません」

「そのうち好きになるよ」

「なりません」

「なったほうがいい。それは館野さんのために。それがたとえ気の迷いだとしてもね」


なにを言ってるのか理解できない。どうしてそうなるのかわからない。


「ヒロにとって館野さんは過去の人間。過去に恋した人だよ。それは淡い恋心。叶わぬ初恋。新しい恋をすれば過去の恋は忘れる。ヒロの隣で幸せそうにしてるアヤを見てもわかるように…ね?」


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