(A) of Hearts
ちょこんと首を傾げ顔を覗き込んでくる前田さん。
気が動転してしまう。
だって、どうしてわたしが"ちぃ"とわかったの?
話を逸らそうとしても、ぐいぐいペースに巻き込まれてしまうし…。
「——前田さま」
「なに」
「おっしゃられてる意味が、よくわかりません」
「まだそんなこという?」
「申し訳ございません」
どう立ち回ればいいのかわからない。
だからひとまずここは、これでいくしかないと思えた。
けれど前田さんは腕組みをしたまま、ひょいっと肩を上げる。
「俺がヒロとアヤに執着している? てかさっき館野さん上司のことヒロって呼んだよね?」
そんなまさか、と思った瞬間、小さく息を吐き出し楽しそうに肩を揺らせた前田さん。
「執着する理由? そんなの聞いてどうすんの?」
「あの、」
「すがりついてきたアヤを捨てちゃったからかなあ。いわば罪悪感? ま、上を目指すためには仕方なかったからしょうがないよね。その結果、彼女は自殺未遂。お腹の子は流れてしまい、それを発見したのがヒロでさ。そこからはじまったからこそ、あのふたりには幸せになってもらいたい。これでいい?」
な。
ちょっと待ってよ。
自殺未遂?
「続きもあるけど聞きたい?」
「——いえ。申し訳ございません」
「情につけ込みたい心境なんだけどなあ」
まさか前田さん。
後悔してるのでは?
本当はいまでもアヤさんのことを?
だからこそ幸せになってほしい。アヤさんの幸せを心から願っている。幸せを与えたヒロには感謝している。
それなら理解できる。
「あの、」
「俺が好きなのはゼロか100ね」
「いまもまだアヤさんのことを愛していらっしゃる」
「おっと〜? ここでそれ?」
「だから、」
「なになに、どうしちゃった?」
わたしだって祝福したい。
その意見は一致しているはずだ。
それに気持ちの整理もつけたし、ここまで追い込まれる理由がわからない。