(A) of Hearts

「わたしは、ちぃです」

「開き直ってどうした?」

「しかし芦沢には、なんの感情も持っていません」

「ふうん」


気のない返事。
けれど、突然わたしの両手首を掴み壁に押し付けてきた。すぐ目の前に前田さんの顔がある。


「っっっ!!」


突然だったので声を上げられない。
呼吸すら止めてしまう。


「!!!?」


首に痛みが。
前田さんの髪が顔に触れる。
まさかこれって!!?


「やめて!!」


無理矢理引き離せば目の前に前田さんの顔があったので思いっきり頬を叩いた。手がジンジン。


「な、なななにすんのよっっ!!」

「秘書なんだから綺麗な言葉を使えよ」

「れ、礼儀は相応しい方に尽くすものです…っ」

「いうねえ」

「なんでこんなこと??」

「ありがとうと感謝すべきだろ」

「は……」


ちょっと意味が分からないんだけど?


「来いといってるときに俺のほうへ来るほうが身のためだよ」

「ひ、人であることを諦めたときに考えます!」

「相変わらずバカだねえ」

「な、」


なんなのほんと!!


「それ。ヒロのより目立つよ。場所も、大きさも」


キスマークだ。
芦沢さんがつけてくれた場所より高いところ。首の付け根あたりが濡れたせいでひんやり。だけどそこだけ熱を持っているのがわかる。
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