別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
この状況はどうすれば収束するんだろう。

私の言葉なんて、奏人はともかく、滝島課長には響かないだろうし。

悩んでいると、思いがけなくノックの音が聞こえて来た。

この場合、私が対応するべきだよね。

立ち上がりドアの方へ向かおうとしたけれど、反応が遅かったからか勝手にドアが開けられた。

「ま、松島さん?」


思いがけない人の登場に、私は驚き目を見開く。

松島さんは私にチラリと目を向けたけれど、何も言う事はなく、滝島課長の方に向かって行く。

その様子はいつもの松島さんとどこか違っていて、声をかけづらい。

「何でお前が?」

滝島課長の驚いたような声がした。
今までにないくらい動揺している様子。

そう言えば、滝島課長と松島さんは過去に関係があったんだ。

仕事中絡んでいるところを見た事が無いから、ふたりがどんな態度を取るのか予想出来ない。

ハラハラと見守っていると、滝島課長の
目の前に立った松島さんが、彼女らしからぬ低い声を出した。

「相変わらず卑怯な男ね」

そのいきなりの攻撃に、私も奏人も目を丸くする。

そして、滝島課長は唖然とした顔をした後、松島さんを睨み付けた。
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