別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
「理沙、頼まれていた稟議書持ってきたよ」

「ありがとう」

私は梓から書類を受け取ると、やりかけの仕事を放って押印漏れなどが無いかざっと目を通した。

特に不備は無いようでホッとした。

奏人が関係する稟議書は、社長決済のものが多い。

社長は多忙でサインを貰える時間が限られているから、迅速に処理しないとなかなか仕事が進まなくなるのだ。

直ぐに席を立ち部長の席に向かい、押印して貰う。

それから社長室行きのトレーに書類を仕舞い、梓が待っている席に戻った。

「随分、忙しそうね」

営業部は外回りの人が多く、私の席の周りには誰もいないからか、他部署に来ていると思えない程リラックスした様子で梓が言う。

「うん、最近仕事量が多くなった気がするよ」

答える間にもメールを確認する。

さっき確認してから一時間も経っていないのに
新着メールが何件か貯まっていた。

「うわ、メールも多いね」

何気なく画面を眺めていた梓が、驚いたように言う。
< 182 / 208 >

この作品をシェア

pagetop