ポイントカードはお持ちですか?

「選択肢は3つかと」

「3つ?」

「1、一か八かこのまま車を走らせる」

「危険だよ。かなり走ったもん。ここよりひどい場所でストップすると思う」

「同感です。次に2、JAFを呼ぶ」

「まっとうだね」

「普通に考えればこれしかありません」

「ということは普通じゃない3があるんでしょう?」

「3、朝までここで待つ」

「・・・・・・・・」


店の開店時間は朝8時。

ということはその前には誰かしら出勤してくるだろう。
何もしなくても朝がくれば事態は打開できる。


だけど一晩だ。
寒い冬、いつエンジンが切れるかわからない車の中で二人きり。

誰がどう考えたって2しか道はない。

それなのに私は即答できなかった。

「・・・伊月君は、どう思う?」

伊月君に判断を委ねた。

伊月君は電気の消えた暗い事務所をじっと見ているから、どんな顔をしているのかわからない。
それでなくても、彼の考えることはいつだってわからない。

普通に考えれば2なのだから、「じゃあJAFを呼びましょう」で済んだ話だ。


なんで?



なんで?



「俺は・・・3がいいです」


ほのかに期待した答えが返ってきて、私の声が震える。

「どうして?JAFを呼ぶとお金がかかるから?」

「お金の問題ではありません」

「じゃあ、どうして?」

「今夜、咲里亜さんを帰したくないからです」


車内の薄明かりでははっきり見えないけど、伊月君はあのキレイな眼球をまっすぐ私に向けてそう言った。

空気がぎゅうううっと濃くなって、息苦しい。


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