ハロウィン
「ハロウィンの仮装道具だったんですね・・・」
俺は風呂敷の中から出てきた黒色のほわほわした猫耳を見つめ呟いた。
「おや?呆れています?」
茶化すように先生が問うてくる。
俺はその問いに「少し」と答え、小さな溜め息を吐き出した。
それを見て先生はクスクスと笑いだした。
「あなた用に用意したものです。お使いなさい」
「え!?」
俺は未だに笑んでいる先生を凝視した。
この猫耳を俺が使うのか?
正直、冗談であって欲しい・・・。
「お似合いになると思いますよ?」
冗談か本気かわからない調子で先生は笑んで言う。
本当にこの人は質が悪い・・・。
「・・・先生は仮装、されないんですか?」
猫耳を避けたいが故にそんなことを聞いてみる。
先生は俺のその問いに意地悪く笑った。
「仮装せずとも私なら化けれますのでご心配なく」
そのもっともな返答に俺は項垂れた。
先生は人間ではない。
先生はモノノケだ・・・。
仮装せずとも化けることが可能なことを俺は忘れていた。
「・・・仮装、しなきゃ駄目ですか?」
俺の問いに先生はとびっきりの笑顔で「はい」と言い、頷いた。
俺はその猫耳をつける覚悟を決めた。
やってやろうじゃないか・・・。
もうこうなればやけくそだ。
どうにでもなれ・・・。