雪の日に祝福を…。
   


 新生児室を訪れると担当の看護師が快く姪の退院の日を教えてくれた。


「元気なんですね。」


「はい。若狭さんは、体調どうですか?」


「〝いい〟とは言えませんけど・・・あの子を見ると元気が出ます。」


 これは、あながち嘘ではなかった。命は、続いていくのだと教えられた。


「そうですか。若狭さんが来るととても機嫌がいいんですよ。」


「へぇ~。伯母さんだって、解ってるの?」


 ガラス越しに小さな命に優しく言った。


「また、明日見送りに来ますからここへ来たこと言わないで下さいね。」


「はい。明日、お待ちしています。」


「ばいばい。」


 手を振ってエレベーターホールを目指す。
 体力の今の自分には、車椅子に一漕ぎも辛かった。


「っ、ゴホッ!!」


 咳が止まらず身体が大きく揺れる。

 ガタンッ!!


「っ・・・、最悪・・・・・・」


 車椅子から滑り落ちてしまった。幾度目かの咳のあと意識を手放した。


 》 》


 朽ちて逝く。
 全て。
 独りだった、私の全てが・・・・・・。

 ただ欲しいのは・・・


  
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