雪の日に祝福を…。
  


「え~!!」


「本当にやめとけって。明日も仕事だろう?」


 兄のようにいつも気遣ってくれる。


「解った。解りました。これ飲んで帰ればいいんでしょう。」


「そうそう、いい子だな。」


「ふん!」


 並々のワインをほぼ一気飲みに近い飲み方をしてグラスを乱暴にテーブルに置く。


「じゃあ、タクシー呼んでやるから待ってろ。」


「平気~酔ってないから自分で帰れまぁ~す。」


 精算を別のスタッフで済ませ手を振って入り口にいた。


「こら、月依。」


「ごちそうさまぁ~」


 身軽に出て行ってしまう。


「マスター。あの人本当にお酒、弱いんですか?」


「ああ。いつもなら記憶なくしてる。〝何か〟あったかな。」


 薬指で輝いていた指輪が無いことに気が付いていた。


 》 》


 這い上がる術など持ち合わせていなかった。でも、仕事で上を目指す以外に残された道はなくて惨めでも会社に居残った。
 そして惨めな私が2人に出来る最大の報復を思い付いたのだ。

 人生最大の晴れやかな日を台無しにされた代わりに二人の門出も〝最悪〟な祝日に塗り替えよう。


   
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