雪の日に祝福を…。
   


 マスターは、手を焼いていた。


「今は、あの子を育てたいの。」


「そうか。顔色が悪いな、具合が悪いのか?」


「残業続きで寝不足なの。頭痛薬がないとダメなの。」


「無理しないで仕事しろよ。」


「そう出来たらいいんだけれどね。長年の習慣は、直せないわ。」


「確かにな。」


 そう答えてグラスを空けた。


「今日は、大人しく帰る。」


「またな。」


 姪を見送る。


「はぁ・・・・・・もう、春ね。」


 空気は澄んでいたが柔らかだった。


「月依さん。」


「!!」


 訊き覚えのある声に背筋が凍る。


「奇遇だね。」


「千明社長・・・。」


「あの件は、どうなっているかな?」


 高級車の中から声がして身動きが取れない。


「頼むよ。もうすぐコンクールだね、終わったら話しておくれよ。」


「・・・・・・はい。」


「では、またね。」


 車が走り去る。


「頭、痛い。」


 痛む頭を押さえる。



「月依のやつスマホ忘れてる。商売道具だろう。まだ居るか?」


 バイブが鳴っていて忘れ物に気が付いた。


「客が居なくて良かった。」


  
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