勘違いも捨てたもんじゃない

平日部屋に居る時、休日、私の指にはいつも武蔵さんから貰った指輪があった。…今はどうだろう。連絡を取らないようにしてから、している指輪を見ては武蔵さんを思っていた。それが…見ていると寂しくなるようで。引き出しにしまって置くことが多くなった。
それでもしてなければ目線は引き出しに行く。そこに間違いなくある事。心は中の指輪を見ていた。

私から何も言わなければ、元係長に襲われかけた事、安住さんは言わないはずだ。だから武蔵さんは何も知らないと思う。知らせなくて、こんなもの、なんて考え方は絶対違うと思う。絶対知らせるし、恐かった、と抱きつくだろうし、抱きしめて欲しいと思うだろう。
直ぐ話さなかったから、もう…頑なに言わないでいようとしているようで…。連絡しないでおこうとすると何もかもしない方がいいのかとか。もう本当に何もかもよく解らなくなった。

もうそろそろ武蔵さんの誕生日が来る。私にお姉さんになったと言った。お返しのようになるから物は要らないと言っていた。でも誕生日だから何かプレゼントしたい。そして…その日は何も期待せず、でも…期待して待ってみたい。時間が作れたと。
自分の誕生日、私みたいに忘れていたらどうしよう。それって簡単にスルーしてしまうって事になる。
当日は平日。せめて休日なら良かったのに。
この日はメール、してもいいよね、誕生日なんだから。朝の内に連絡をしておこう。そして、ご飯はどうなるかは解らないけど、ケーキも買っておこう。
…誕生日だから私から行った方がいいのかな。
でも、それは行き違ったりする元かな。
…話がしたい。とにかく人を知るには、思っている事、何でも話さないと解らない。解り合えない。


武蔵さんの誕生日の朝。私はメールした。

【お誕生日、おめでとうございます】

それ以外何も書かなかった。色々書くくらいなら些細な事も顔を合わせて話したい。これだけでも嬉しいと思ってくれるだろうか…それとも暫く連絡してないから、たったこれだけを…形だけ送って来たか、と思われてしまうのか…。何だか、期待しないと言いながら、待ってしまう事が恐い気がした…。
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