勘違いも捨てたもんじゃない
ブー、ブー、…。
【20分後くらいには着くから、用意しておいて。大丈夫?】
【解りました、大丈夫です】
部屋で待ってていいよね。……武蔵さんが来る。
こんな日だから、安住さんに貰ったワンピースを着て行こうと思った。後から届くから受け取ってと言われた荷物は大きな箱で、宅配の人が代車で運び込む程だった。
…宅配ボックスに入るような物では無かったんだ。
それは百貨店から持って来てくれていた物だろうと思った。選んで返すというより、始めから買い上げていたのでは無いかと思った。サイズは解るからと言っていた通り、ピッタリだった。簡単にメールで有難うございましたと済ませて良いものかと思ったが、お礼を言っておかなければいけない。だからメールしたんだ。
【受け取らないと言っても、きっと、返されても困るから受け取れと言われるのでは無いかと思い、素直に受け取る事にしました。困る程の沢山の洋服等、有難うございました。サイズも大丈夫です】
はぁ、…どれも高いだろうな。こうは言ったものの、受け取ってしまうのは本当恐い。
箱の底の方には靴箱が数個、ストッキングまで各種色々入っていた。…そうよね、酷い状態だったから。本当にどれだけ気配りしてくれていたのか。すぐ考えてしまう。こんなに気配りができるのは、普段から女性に贈り物をし慣れているからに違い無いと。
家に来た時に持って来ようとしないのも考えての事だろう。
大人の男性なんだから、こういった贈り物の仕方はできて当たり前なのかな。
頂いた中で、シンプルでラインの綺麗なワンピースを選んだ。頂いた物は、ちゃんと着てるという事、見てもらった方がいいから。
もうそろそろ来る頃だ。
ピンポン。
来た。
「はい、下ります」
「居てくれ」
「え?あ、はい。解りました…」
下りた方が早いのに。
ピンポン。
「はい、どうぞ」
「あ、…なんか、いつもと雰囲気が違うな…」
…手が頬に触れた。…ん、んん、…唇も触れた。
「ん、武蔵さん?…駄目ですよ…」
やんわり拒否しながらも嬉しかった。
「ん、ショートカットして飛ばして来たから、5分は浮いた時間がある」
「え?…あっ」
「行くんだな…俺はあくまで迎えのみだ」
え?そうなの?………ん、ん。どうしよう。でも武蔵さんは行くことを知ってるから大丈夫なのか。
「はぁ、帰りは多分、俺じゃ無い。そろそろ行くけど大丈夫か?…口紅、塗り直さないとな…」
あっ。バッグからハンカチを取り出して武蔵さんの唇を拭いた。
「私もですが武蔵さんも、…お直しです」
背を向け、鏡を見ながら塗り直した。
「お待たせしました、…行きましょうか」
振り返ると抱きしめられた。
「…真希…綺麗に塗り直してるのが浩雅の為みたいでなんだか嫌だ…」
…武蔵さん。
「…違いますよ。ただのエチケットです。これは武蔵さんに盗られちゃったからです」
…はぁ。…真希、俺は…。
「…行くか?」
「はい」