勘違いも捨てたもんじゃない
「君は…好きだけど諦めた武蔵の気持ちを無駄にするのか。武蔵は伝えてちゃんと終わらせたんだ。…もう、気持ちは呼び起こさないと決めて、終わらせたんだ。君達は終わったんだ」
…。
「解っているのだろ?武蔵が仕事を優先に考え過ぎて。今まで特に気にせす、ずっと仕事にどっぷりだったから。女性とまともにもつき合っていなかった。加減が解らなくて、君に寂しい思いをさせ過ぎたと悔やんだ事。君にその気があったら、武蔵は秘書を辞めて、君と一緒に居ようと思っていた事。ただ好きだけで、つかの間会うだけのつき合いは、年齢的に無責任になるから結局は長くは続かない事。それなら…続かせない事。…解らないから、…君も結婚したいとは言わなかった。会えなくて、君も寂しかっただろうが、武蔵も寂しかった。君がここで襲われた事、すぐ知らせてくれなかった事、もの凄く寂しいと思ったと思う。自分はその程度なんだと、気持ちを引かせた…決定的に冷めたと思う。…私が関わっていた事も…。私が一緒に居たからなんて、もし言い訳を言うのなら、それは君の心の問題だ。私は私でした事。君は君でした事だ。いや、しなかった事だ。現に君は自分で服を調達して帰った。帰れたんだ。
私がどんな世話をしようとも、帰ろうと思ったら直ぐ武蔵に連絡して帰れたはずだ。あいつは何をおいても、直ぐ飛んで来たはずだ。そういうモノだろ、普通。それをしなかったのは君だ。
私が何をしようが、何を言おうが、君の問題だ、全て君が判断した事だ」
…。
「……初めから言っているだろ。君は私の事が好きなんだ、と。武蔵を大事にできなかったのは、武蔵にただ強く引き付けられただけだったからだ。だからよく解らなかったんだ」
…違う。
「認めろ」
「…違う」
「違わない。君の心は私に侵食されている。会う度、君は私に取り込まれている」
「違います。そんな事ない」
「だったら何故強く拒否しない。嫌なら暴れる。暴れなくても距離は取る。触れられたくないなら関わらない。違わないんだ、君は俺が好きなんだ。もう、とうに好きになっているんだ」
…。
「…ほら。…拒否しない」
暴れるなんてできない。がっしりときつく抱きしめられた。離れるなんてできない。
「高鞍真希、一緒に帰るぞ」
「………はい」
「ほら、違いないだろ」
違う…。違う。……違う。