勘違いも捨てたもんじゃない

?ん?ん゙んー、……ん?。まさか…落ちたの?
ああ、また、この前と同じくらいの時間。眠くなっちゃったのね?……もう、どういうつもりですか…。重ねた唇…ずり落ちて行ってますよ、もう…、中途半端な誘惑になってますよ?…。はぁ…抱き着いたまま寝てる…。本当に寝てるかどうか疑わしいけど…寝てるのよね?

あんなに大人な攻め文句を言ってたと思ったら、こんな…。こんなのまた…ギャップ萌えの元じゃない。……毎回こんな事されたら…女性は大変ね。
………車、大丈夫かしら。ちょっと、寝ててくださいね。

ベランダから見下ろして見た。よく解らないけどないみたい。この辺りに無いという事は一先ず大丈夫だろう。きっとまたあの女性に融通して貰ったんだわ。一応偶然、目を覚ましたら聞いてみようかな…。

今夜は自分で移動してくれないならソファーのままですよ。誘惑した罰…。そのまま布団を掛けた。
明日の予定は知らない。だから…知らない。好きに寝て、好きに起きて帰ってください。…おやすみなさい。

私は遠慮無く、寝室のベッドに。
いつものように床のライトだけにして明かりを消した。ちゃんと起きて帰るか心配はあるけど、社長さんなんだからどうとでもなるでしょ。私もとうに就寝時間を過ぎていた。…もう、眠い…。


…こんな事になるような気はしていた。
なんだか寝苦しくて目を覚ましたら、安住さんが目の前に居た。着ていた物はちゃんと脱いでいた。そう、パンツのみ身につけていた。そして私の腕の中に収まって居た。前回と違っていた事と言えば、朝だったという事。安住さんは帰らなかったんだ。何時に起きたらこの人は大丈夫なんだろう。
取り敢えず、危険だから言われたように優しく起こしてみようかな。

「浩雅さん…、起きて」

肩をトントンしてみた。…このくらいでは駄目なのかな。

「浩雅さん、起きて、起きてください。浩雅さん…」

「ん……もう一回言って…」

…とうに起きていたんじゃないの?夜のお子ちゃまが残っているのかしら。

「浩雅さん、起きて」

「ん、浩雅だけでいいからもう一回」

「浩雅さん…」

「ん、…おはよう」

抱っこ虫? 手を広げたと思ったら抱きしめられた。

「…ほら、君は嫌がらない」

「えっ?…もう。あ、それより、車は大丈夫ですよね?」

「ん?…ああ、大丈夫だよ。あの女性の言うところに停めたから」

「随分、お世話になっているようですね?」

「やきもちなら嬉しいな」

頭を撫でられた。…も゙うー。…遊び人。

「違いますー」

「…あぁ、いいな、こんなの」

「え?」

「毎朝、こうやって起きて仕事に行きたい」

…もう朝だし。昨夜の話の続きみたいなのは流石にいいです。早く行ってください。

「間に合いますか?」

「楽勝だ」

「珈琲でも?」

「いや、止めておく、ここで君とこうして…寛いでしまっては仕事モードに成れなくなりそうだ。このまま直ぐ帰るから」

「…はい」

私は寛いでいるつもりは毛頭ない。


ネクタイ以外全て着終わっていた。

「じゃ、世話になった。…ちょっとだけ」

チュッ…と頬に触れた。

「え?」

…。何を…いきなりちょっとだけとか。触れられた頬を押さえた。

「行ってきます」

「あ、行ってらっしゃいませ」

…あ。挨拶は惰性よ、惰性。反射的なものよ。

「…ちょっとだけ」

え?また?抱きしめられた。…さっきからちょっとだけ、ちょっとだけって…。

「やっぱり、こんな風に仕事に行きたいな。…チュ。…行ってきます」

………えーっ?!今度は唇に。

「ちょ、ちょっと」

「ハハハ」

ハハハって…なに、もう……やりたい放題だ…。はぁ…もう…結果として長い長い一夜だった……。疲れる。
< 70 / 150 >

この作品をシェア

pagetop