勘違いも捨てたもんじゃない

浩雅が朝帰りして来た。どこに居たのかは聞かなくても解っている。GPSは居場所を知って社長の安全を確認する為。決して居場所によって深く詮索する為のものではない。
少し前も、夜中、どこかに出掛けたようだった。あの日は、明け方前にはとうに帰っていた。ほんの数時間の外出だった。

真希からはどの日の事も何も言って来ない。最初だけだな、浩雅とご飯に行くって。ご飯だけのつき合いだから大丈夫だって。何も言って来ないって事は、大丈夫だっていう範囲内なんだよな? 真希の住所で浩雅の携帯が留まったままであっても、何もないんだよな?
あいつは何も言わないから。朝帰りした時だって、よう、おはようだ。…爽やかにな。…腹が立つ。心配なら沸々してないで聞けって話だ…。
あいつが目に見えて調子よさ気な訳…。だから聞けって…。
ちっちゃい男みたいじゃないか…。いやいや、そんな事言ってる場合じゃないか…。真面目に考えて、何かあってからでは奪い返せないかも知れないんだから。

真希が社長という肩書で何かが変わるタイプとは思わない。そういうのは気にしない、惹かれる要素ではないと思うタイプ…だと思ってる。…短いつき合いで何が解るって言われても、そう思うからそう思うまでだ。あるとするなら、あいつの…、無駄に備わってしまった紳士的素養。あれに上手くやられてるのかも知れない。
あれは、レディーファーストやら、何やら、ちょっとした気の利いた事をするから、女性はそれが堪らないらしいし。言い方は悪いが結果上手く取り込まれてしまう。どれだけ周りの奴が恥ずかしさから何もしようとしてないのか…比べられるとな…。歯の浮くような台詞でも、あいつが言うと妙に寒くないし。…容姿と合っているからだろうな。真希との事が無ければ、浩雅の事、改めて分析するつもりも無かった。

俺と浩雅と…言い方は悪いが、天秤にかけた時、真希はどっちを選ぶのだろうか。
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