勘違いも捨てたもんじゃない

そんな…うさぎをダシに、…開けませんから。
…そうそうタイミングよく、あの女性にだって出くわすはずも無い。

…外は寒かった。さっき、ちょっと出ただけだけど、冷っとするくらい気温は下がっていた…。私が寒かったのは薄着のせいでもあるけど…。

ピンポン。

…。

ピンポン。

…はぁ。

「…どうぞ」


コンコン。
どういうつもりなんだろう。…はぁ、入れたら入れたで、また隙があるとか言われるけど。

「……どうぞ…えっ?」

「ではお邪魔します」

押し付けるように渡された。安住さんはもう部屋に向かっていた。
渡された物は、白いうさぎ…の、ぬいぐるみ。

「あ、ちょっと、安住さん」

「ん〜?」

あ゙、私のみたらし…食べてる…。

「あぁ、美味しそうだったから、思わず頂いてしまった」

…団子。何も…食べかけの方を食べなくても…。
まだ手付かずのが二本あるのに。

「あ、…もう。どうせなら、綺麗な、食べてない方を食べてください。そんな事より、うさぎ、これ…」

「うさぎだよ?」

「解ってます。跳ねてるって…うさぎ…凄く寒そうだって。…これ、ぬいぐるみです、生きてない」

「いやいや、薄着じゃない?そのうさぎ」

…人では無いが擬人化したという事ですか。

「あぁ、これ、お土産。何だか気が合うな。最初は団子にしようとしたんだが、団子にしなくて良かった。どら焼きだから、はい」

…、はぁ、…もう、本当に。今はどら焼きとか…どうでも…。
ゔ、だけど…きっとこれは、小豆あんが美味しいあのどら焼きに違いない…。

「私も何か、飲み物を頂けたら嬉しい」

…勝手に食べて勝手に要求されても…。

「安住さん…あのですね」

「あ、うさぎを渡したから忘れていた」

立ち上がって近付くと、うさぎを取り上げソファーに座らせ、何の躊躇いも無く抱きしめられた。
…はい?…なんですか、これは。

「…ただいま」

…?……え?

「この前、行ってきますと言ってこの部屋を出た。今夜、帰って来た。だから、ただいま」

…ん゙ー。んー。

「…生憎、ここは安住さんのお家ではありませんよ?
それから、もう一つ。生憎と、緑茶を切らしています」

「ん、大丈夫、珈琲でいいから」

…はぁ、あ。

「安住さん?」

「ん?」

「車は?」

「駐車してるよ?」

「どこに?」

「いつものところ」

「いつものところ?」

「そう。あの女性が、いつ使ってくれてもいいって言ってくれたんだ。今、ずっと空いてるからって」

そんな約束してたんだ…。
…何だか都合のいい伏兵を従えた感じね。
そんな事より、何をどう片付けていったらいいのか。…振り回された感が半端ないのですが。
まずこれからね。

「離してください。珈琲が入れられませんから」

「ん、こうしてると珈琲はどうでもいいんだけどね」

…今、何か入れて欲しいって言ったでしょうに。どうでもいいとか、…何ですか、それ。
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