勘違いも捨てたもんじゃない

「君の言った武蔵は、武蔵猛で間違いないよね?」

「…はい」

言ってしまいました武蔵さん…。

「私は君が武蔵を好きだからと言っても、引かないよ?」

…。

「雇用関係とか、幼なじみとか、何も関係無い。私も可能性はゼロだとは思っていない」

…。

「こうやって、ここに居る事も狡い事だとは思っていないよ?武蔵は私がここに来ているだろう事は知っているからね。当然、武蔵は君の部屋は知っているのだろ?何故来ないのだろうね。私なら、私の好いている女性の部屋に、何をするか解らない男が居ると知ったら、追い出しに来るけどな。…ただでは済まさない。ああ、引っ越しもさせるかも知れない。一層のこと、一緒に住んでしまうけどね」

…この顔、この目。私がいつぞや感じた、ゾクッとしたモノはこれだったのね。笑っているからこそ恐い…。この人の、普段は面に出さない男臭い部分だったんだ。
…それで、こんなに思いっ切りぶちまけて、一体どうするつもりだろうか。

「はぁ、取り敢えず、一先ず落ち着こうかな。
やっぱり珈琲、入れて貰っていいかな?」

「あ…はい」

解放された…。


「もう、全部解ってしまったし。これで普通に攻められるようになったって事かな」

…諦めるとは思って無いけど。

「当たり前だけど、武蔵とは、もうしちゃったよね?アイツがしないわけがない」

「…、ッ、ゔ、ゴホゴホ」

…そんな言い方。

「あー、ごめんごめん、大丈夫?聞いた私が野暮だったね」

「…大丈夫です。…」

はぁ、ゴホゴホ、…もう…。

「好きなんだから…仕方ない事だが」

「あ、もう、そんな話は…」

されても困る。とても困るし、話す事でも無い。

「満更でも無いと思ってるよ?何をしても強く拒否されないから」

「え?」

「繰り返して言うようだが、君は、私とキスをしても拒否しなかった」

「それは…」

その言葉を強く否定できないのもある。したのは事実…。

「どうして、こうして落ち着いて話しているんだろうね」

…。

「初めから、傍に居ても違和感が無いんだよ」
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