勘違いも捨てたもんじゃない
言葉の…策略。
「公園で話した時から…。大丈夫?こうして話していると洗脳されたと思うんじゃないの?上手く惚れさせようとしてるって、思わない?ずっと一緒に居ると引き込まれてしまうよ?そうされたくないんでしょ?」
「……話していると楽しいのは確かです。人って、一緒に居て楽しくて、気がつかない内に、また会いたいなと思わされる人って素敵な人だと思います。…一般的な話です」
「一般的な話。そうやっていつも逃げようとするね。素直に認めるのがそんなに恐い?」
…。
「ほら、こうして黙ってしまうのも。気持ちに正直になるのは恐い?」
…。
「自分の気持ちに気が付いていても、素直になれないのは、傷付けてしまうかも知れないと思っているから?よく解らないと思ってる?それが可笑しいと思わない?
誰かにだけ強い思いがあるなら、解らないなんて無い。誰に何を言われようとかわせる。揺れたりしないだろ?」
武蔵さんだけを好きなら、揺れるなんて無い事。安住さんの事がどこか気にかかっているなんて事が…既にって、…言いたいんだ。
「あぁ、恐がらなくていいからね?ここに武蔵が来てる時に、俺は乗り込んで来たりしないから。君はまだ私のモノでは無い。だからそんな事をする権利は私には、無い」
恐いって思った事、解ってしまったのかな。
あっちこっち話が飛んで収拾がつかない。元々散らかってしまった話だ。グチャグチャする…。
「…月は本当に綺麗だったよ。この時期の月は季節柄、風情があるね。物悲しいようで、人の気をざわざわさせる。…惑わせる。見る人のおかれてる心情は大いに左右するね。自分が今、どんな感情を持っているのか。一人で見るのか、…誰かと見るのか。あー、一緒に見て惑わせようとした訳じゃないからね?そこは誤解の無いように」
…もう、嫌だ。
「さあ…。今夜はどうしようか」
「…え?」
「嫌なら帰さないと駄目だって言っただろ?さあ」
安住さんは立ち上がった。ここがもう境界線だと思った。何もかも聞いて、その上で私がとる態度。
「さあ、押し出さないと、私は帰らないよ?」