勘違いも捨てたもんじゃない
もの凄く落ち込んだ…。きっと、馬鹿になってる。…自惚れている。武蔵さんと出会ってから…それに安住さんとの関わりも……。
素敵な男性と関わっている自分。どこか気づかないところで調子に乗っているんだ…。
もう暗くなっていた。日没は早い。
駅には行かず歩いていた。
来てしまった…。
カサカサと鳴る黄色や紅の葉を踏みながら公園を通り抜けた。
ギーッと音のする小さなゲートを開けた。
ストンと下りた。道を渡り、振り向いて見た。
「…はあ、綺麗…」
銀杏の葉はハラハラと落ちていた。楓は紅く色付き始めていた。脇には常緑樹が聳えていた。
僅かな街灯に照らし出された景色は心に滲みた。……はぁ、…癒される。時間を忘れてしまいそう。
少し遠くでパキパキと小枝を踏み締める音。照らされたライトが一瞬で消えた。ドアの開閉音、ピッと施錠する音がした。
カサカサと誰かが落ち葉を踏み歩いている。音は徐々に近づいて来ていた。
「こんばんは、お嬢さん」
ギーッと音がして声の主が近付いて来た。
「忘れられてしまったかな?」
フワッと肩にジャケットが掛けられた。
…あぁ。……。
「…忘れていました。余りに…静かで綺麗だから…」
俯いた。少し涙声になった、気づかれてしまっただろうか。
「フ。今だけのことではないのだが…ちょっと待ってて」
どこかへ行ってしまった。
「…はい」
「…あ」
温かい缶珈琲を包み込むように手渡された。
「こんなに手も冷たくなって。珈琲の方が好きなんだよね?」
え?涙を親指で拭われた。
「後ろも見てくれるかな」
そこは防音シートで囲われているのは知っていた。
シートを捲って中に手を引かれた。あ。
「大分、形になって来た。突貫工事だな。無理を言って毎日急かし通しだ。だけど、今のこの景色の中で、お茶もランチもしたいだろ?だったら急がなきゃな。今はまだ、括弧、仮、状態だ」
奥からディレクターチェアを持ち出して来た。
「はい、座って?」
勧められるままに黙って頷き、腰掛けた。
「…寒く無い?大丈夫?…貸して、開けよう」
カチッと缶珈琲を開けて渡してくれた。
肩を並べて空を仰いだ。
「あれ、金星かな…」
あー、確かに…月の近くに。
「………そうですね。……宵の、明星…」
月と距離をとり、そっと並ぶように輝いていた。
手が頭に触れた。肩に頭を乗せられた。