ふたりで

7月に入ると、今まで大学校内では、ほとんど 一緒に行動しなかったこーちゃんが、私を見つけると、話しかけたり、連れ立って歩いたりしてくるようになった。

学部が違うと、校舎も違うし、1年生が履修する一般教養も、同じ時間で取れなかったから、一緒にいることは、なかなかない。

幸は、法学部校舎で啓太君と会うことがあるけど、彼女が大抵一緒にいるようで、余り話しかけられないと、言っていた。

幸がある日、こーちゃんと啓太君だけの時だけ、『よく女の子たちに囲まれているみたいだよ』と言ってきた。幸も何回か見かけているらしい。

こーちゃんも啓太君も、背が高くて、それなりに整った顔立ちをしているから、もてるだろうとは、思っていた。

その片方のこーちゃんが、私に話しかければ、女の子たちの視線が鋭く突き刺さるのは、避けられないかな。

「こーちゃん、女の子たちの目が、怖いんだけど。」
と、それとなく、訴えてみた。
「今までみたいに、大学以外で、会えばいいと、思うんだけど。」
とも、頼んでみた。

だが、こーちゃんからは、
「気にしない、気にしない。別に悪いことしてるわけじゃないだろ。堂々としてようぜ。」
と呑気に言ってくる。

男子と違って、女子の世界は、ちょっと怖い。そこのところ、わかっているのかな?
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