ふたりで


洒落たフレンチレストランで、食事をした。

相手の男性は、大手の文具を扱う会社の部長をしていて、穏やかだが、明るい人だ。

第一印象は、一応合格点かな。

娘も、屈託のない性格のよさそうな子だった。実の母親を5才で、癌で亡くしていた。

たぶん、今まで寂しかったのか、母さんとも、姉妹のように気が合っているし、一度に母親と兄が二人もできると、喜んでいる。

この分なら、母親が上手くいかなくて、苦労することはないだろう。

彼ら親子と母さんは一緒に暮らすことになるが、俺たち兄弟とは、一緒に暮らすことはない。まあ、会った時だけの兄と妹だ。

いい雰囲気で、食事が済み、母さんと俺たちは、家に帰った。今夜は、兄貴も泊まって、話をした。

母さんは、まだプロポーズの返事は、していない。俺たちの意見を聞いて決めるつもりだと。

「俺たちは、反対はしないよ。いい人みたいだし、娘さんとも仲よさそうだし、母さんが幸せになれるなら、俺たちは、いいよ。」
と、俺が言うと、

「まあ、俺たちは、一緒に暮らすことはないから、実質3人家族だからな。でも、母さんを大事にしてくれないようなら、俺たちも黙っていないから。」

「ふたりとも、ありがとう。じゃあ、母さんも前向きに考えてみるね。返事する前に、決まったら、ふたりには言うから。」


その夜は、久しぶりに3人で、近況を語り合った。もちろん、真愛と両親と親しくしていることも、話した。母さんも兄貴も喜んでくれた。
< 73 / 90 >

この作品をシェア

pagetop