ホテル王と偽りマリアージュ
とにかくお互い相手の顔を知らないままの約束で、シチュエーションが被ってしまったが為に、お見合い相手を間違えてしまった。
端的にぶっちゃけて言えば、そういうことだ。


私の方は遅刻したせいでお相手は帰ってしまっていて、結局どの人だったのかわからずじまい。
あーあ、で済ませれば終わる話だった。


ところが、彼の方はそういうわけにはいかなかった。


『君、この責任どう取ってくれる?』


彼は冷酷にそう言い放ったのだ。


割とラウンジ内の注目を浴びてしまったのに、それを一向に気にする様子はなく、彼は再びテーブルに戻った。
私にももう一度椅子を勧め、冷めたコーヒーに眉を寄せ、店員を呼んで新しいものを持って来させた。


そうして、私に『責任』について説明してくれた。
その話を聞いて、私はただ仰天して、口をパクパクさせるだけだった。


だって、まさかその彼が、自分が勤務するホテルの経営者の御曹司だなんて、思いも寄らなかったから。


だと言うのに。


『来年、アメリカでオープンする新ホテルの経営を任されてる。それまでに結婚を決めることが、親父から出された社長就任の条件だったんだ。今回の破談で、ホテルのオープンは延期せざるを得ない』


なんだかとてもデカくて怖いニュアンスを感じる言葉に、私は背筋をゾッと震わせた。
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