ホテル王と偽りマリアージュ
シレッと返された要さんの言葉に、一瞬虚を突かれて素の反応を見せてしまった。
戸惑いながら一哉を見下ろす私の前で、要さんはやっぱり面白そうに笑っている。


「って、別に一哉が羽目を外すとは思ってなかったけど。でも……なるほど。椿さんの反応見る限りじゃ、やっぱり一哉とヤってないんだ。新婚なのに、なんで?」

「っ……」

「うちの親族は、皆藤の嫡男の後継ぎが生まれるの待ち望んでるのに。一ヵ月も、まるで無しっておかしくない?」


全てを暴かれていく感覚に焦る。
黙ってないで、素知らぬ顔して言い繕うべきだと思うのに、見透かされたことに動揺して、私は答えを求めて一哉に視線を落としてしまった。
けれどもちろん一哉は私に正解を教えてくれる状況にない。


「そうか。かもな~とは思ってたけど、やっぱり君と一哉の結婚は偽装……ってことか」


相変わらず口調は軽いけれど、要さんは私に向かってはっきりとそう言った。
一瞬ビクッと身体が震えてしまったのも、その細めた瞳で全部射抜くように見られていた。


私じゃこの人をこれ以上誤魔化し通すなんて無理だ。
心の中で一哉に『ごめん』と謝りながら、私は一度だけ小さく頷いた。
要さんはどこか満足そうに小さな息をついた。
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