ホテル王と偽りマリアージュ
「一哉、あのね、私……」

『椿。要のこと、どう思ってる?』

「え?」


思い切って口にし掛けた言葉は、無情にも一哉に遮られた。
しかも予想外の質問に、私は一瞬素で戸惑ってしまう。


『俺、アイツの女癖の悪さとか知ってるから逆にわかる。椿は今まで連れ歩いてた女と全然違うタイプだからこそ。要、本気だ』


声のトーンを抑え、早口で私にそう告げる。
それはきっと、強い混乱の中で、自分ではっきりわかる答えなんだろう。


『少なくとも俺は、要が女にあんな強引なことするの、見たことない』


そう畳み掛けられて、私は一度目を伏せた。


「ごめん……。今日、ホテルに訪ねてきたから、要さんと会った」

『……そう』

「要さんに、言われた。『好きだ』って。『本気だ』って」


いつの間にか正座していた膝の上で、私は右手をギュッと握り締めた。
電話からは一哉の深い溜め息が聞こえてくる。


『そっか。やっぱり』

「で、でも一哉、聞いて。私ね……」

『椿。もし君が、要の気持ちが嬉しいって言うなら、俺は……』

「聞いてったら!!」


一哉が私になにを言おうとしてるかわかるから、思わず声を張り上げていた。
彼が怯んだ気配が、私の耳にもちゃんと伝わってくる。
< 139 / 233 >

この作品をシェア

pagetop