ホテル王と偽りマリアージュ
「一哉も言ってただろ? 嫁にするなら椿さんみたいな女性って」

「なんなんですか、その理由」

「不満? でもまあ実際、俺もその通りだと思うし。で、残念ながら俺にはそういう女性と出会う機会は早々ないんだよね」


出会いなんてどこに落ちてるかわからない。
それこそ私と一哉の始まりだって、とても予測不可能なものだった。
そう反論しようとして、要さんに先を越されてしまう。


「俺に寄ってくるのは、皆藤の名前欲しさに香水プンプンさせて媚びる女ばかりだ。そんな中で椿さんは、最初の印象から新鮮だったって言うのもあるし……」


いきなり身を屈めて顔を覗き込まれ、ドキッとしてしまう。
彼は一度意味深に言葉を切ってから、再び自分のシートに背を預けた。


「『一哉の物』だと思うと、奪ってやりたくなる。そういう楽しみを満たしてくれるっていうメリットもあるかな」

「楽しみ……?」


どこかを見据えるように目を細める要さんに、一瞬ゾクッと背筋に冷たい物が走った気がした。
怯んで次の言葉を発せずにいる私を横目で見ると、要さんはフッと小さな笑みを浮かべる。


「驚くことじゃないだろ? 年が近いせいもあって、俺は昔からなにかと言うと一哉の比較対象にされた。で、評価を得るのはいつも一哉の方だ。それが真の結果なのか、単に一哉が本家嫡男だからか、理由は闇の中だけどね」
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