ホテル王と偽りマリアージュ
たっぷり上質な睡眠をとったおかげで、私は翌日から精力的に美術館・博物館巡りをした。
メトロポリタンはもちろん、近代美術館にグッゲンハイム、自然史博物館にニューミュージアム……。


日本にいると、それほど興味を持って行くわけじゃないのに、一哉が車を手配してくれてから、ちょっと距離のある場所でも足を伸ばした。


夜は一哉と合流して、ゴージャスなディナーを堪能する。
彼が連れて行ってくれるレストランは、高級な三つ星ばかりではなく、今ニューヨークでトレンドのカジュアルレストランだったり、斬新さで話題のテックスメックスだったり。
共通しているのは、どこもスタイリッシュで洗練されていて、もちろん美味しいレストランということ。


ニューヨーク入りして一週間で、ブロードウェイのミュージカルを二つ観た。
日本でもおなじみの演目だから、セリフがわからなくても、歌とダンスで楽しめる。
自分がニューヨークに来た意味を忘れそうになるくらい、私は冬のニューヨークをホットに過ごしていた。


そしてすっかりクリスマスの余韻が消え失せた大晦日、十二月三十一日。
いつも通りディナーを堪能した後、一哉はタクシーの運転手さんに、ホテルではない場所を行き先に指定した。


走り出したタクシーの後部座席で『どこに行くの?』と訊ねる私に、一哉は悪戯っぽく目を細め『いいとこ』とだけ教えてくれた。
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