ホテル王と偽りマリアージュ
建設中のホテルかと思ったけど、首を横に振って否定されてしまった。


「有名な観光地だから、心配しないで。今夜はディナーだけじゃなくて、ちょっとデートしよう」


片目を閉じて魅惑的なウィンクをして見せる一哉にドキッとしながら、私は身を乗り出して車のテールランプが連なる通りの先を見遣った。


ここ数日でいくらか土地勘もついたと思うけど、どこに行くのか見当もつかない。
種明かしをして欲しくて一哉の横顔を眺めてみたけど、彼は薄い笑みを浮かべるだけ。
結局私も諦めるしかなく、タクシーが停まるのを待つしかなかった、けれど……。


タクシーを降り、一哉に腕を引かれるままにエレベーターに乗った。
高層階まで上がり着いたのは全方向ガラス張りの展望フロア。
たくさんの人の隙間を縫ってガラスに手をついた途端、私の視界にマンハッタンの夜景が広がった。


「うわあ~!!」


思わず感嘆の声を上げてしまう。


一哉が私を連れてきてくれたのは、もちろんガイドブックに載ってる超有名な観光スポット、エンパイアステートビルだった。
摩天楼の夜景を堪能出来るスポットで、カップルや観光客でひしめき合っている。


夜景を楽しむ為にフロアの照明もちょっと抑えめ。
眼下の地上の光で足元がぼんやりと浮かび上がり、ほの暗いロマンチックな雰囲気が漂う中、一哉が目を細めて私を見つめた。
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