ホテル王と偽りマリアージュ
そして今夜、皆藤グループの親族総出のお祝い会の会場は、この宮殿で一番立派な大広間だ。
私と一哉が到着した時、大広間は気品ある紳士淑女で埋め尽くされていた。
多分きっと、結婚式や披露宴の場で一度は顔を合わせてると思うけど、あまりにすごい人数で、名前はもちろん顔もほとんど覚えていない人たちばかり。


一哉にエスコートされながら、ぎこちない愛想笑いを浮かべて会話を交わす。
実は話している相手が誰だかもイマイチわかっていない状況のまま。


普通の感覚なら、足が竦んで動けないくらい、私は相当場違いだと思う。
それでも愛想笑いまで浮かべられたのは、隣の一哉のエスコートが完璧なのと、目の前の光景にあまりに現実味がなくて、夢を見てるんだと思うことが出来たせいだ。


親族主催のお祝い会は、平日の夜ということもあり、二時間半ほどでお開きになった。
それでもマンションに戻った時、時計は午後十時を指していた。


一日普通に仕事をして、その後もほとんどお仕事のまま、朝出てから十二時間以上経過しての帰宅。
玄関のドアを開けた途端、さすがに身体からドッと力が抜けていくのを感じた。


「お務めご苦労様、私……」


今日一日の自分の頑張りを褒め称えるつもりで、つい独り言を漏らした。
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