ホテル王と偽りマリアージュ
妙に甘ったるい自分の声に驚き唇を噛んで堪える私に、一哉は楽しげにクスクス笑う。


「なんだ。結構可愛い声出せるんだ」

「い、一哉っ!」

「おかげでちょっとテンション上がった。正直、椿ってどうも色気足りないし、抱いてやるとは言っても俺がその気になれるかどうかの方が不安だった」


かなり酷いことを言いながら、色素の薄い瞳に確かな情欲の色を滲ませる。
一哉はしなやかな獣のように私の身体に体重を預けてきた。


肌を弄られる感覚にビクビク身体を震わせながら、背筋に走るゾワゾワした刺激に耐え、私は血が出るかと思うほど強く唇を噛み締め――。


「い……や!! やだやだ、一哉、止めて! お願い!!」


顔を大きく横に背けながら、死に物狂いで悲鳴を上げた。
私の本気の拒絶が伝わったのか、一哉の手がピタリと止まる。


「……椿?」


ベッドをギシッと軋ませて、彼がゆっくり身体を起こした。
服を中途半端に乱されたまま、胸を上下させて息を弾ませる私を、怪訝そうに眉を寄せて見下ろしている。


呼吸を整え乱された胸元の服を慌てて直してから、私は強く目を閉じた。
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