ホテル王と偽りマリアージュ
そして、


「ご、ごめん。私、は、初めて、なのっ……!!」


震えてどもる声で、それだけを必死に短く叫ぶ。


「……え」


短い声を漏らしたっきり、一哉は絶句した。
恐る恐るゆっくり目を開けると、彼は見たこともないくらい大きく目を見開き、呆然とした顔で私を見下ろしていた。


「椿……処女なのか?」


はっきりした言葉で遠慮なく探られる感覚に、とてつもない屈辱を感じた。
それでも私は、何度も何度も大きく首を縦に振った。


「……マジか」


大きな手で目元を覆い隠しながら、一哉はどこか気の抜けた声でそう呟き、ベッドにペタンと座り込んだ。


一哉から完全にその気が失せたのを感じて、私もやっと身体を起こした。
なんとなく彼から身体の正面を背けながら、私は肩を竦めて身を縮込める。


「そっか、参った。さすがに……『ヤっとく?』ってノリはマズいよな。……ごめん」


ボヤくような声に、私は一哉をそっと肩越しに振り返った。
一哉はサラサラの前髪を掻き上げ、はあっと大きく息を吐く。


「え~と……安心して。こういうからかい方、もうしないから」


ガシガシと髪を掻き乱す一哉の言葉にホッとしながら、心のどこかで地味に傷付く私がいた。
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