ホテル王と偽りマリアージュ
「一哉が私の職場に視察に来た時、案内を担当したのが私なんです」

「へえ~。そんな偶然のラッキーで、あの次期ホテル王を射止めちゃったの。そりゃあ椿さん周りから相当やっかまれたろ?」


多少ワインで酔っていても、要さんの言葉の意地悪なニュアンスは私でも感じる。
だから私も胸を張って意地悪返しをしてみた。


「地味で華がない私が、たったそれだけの接点で一哉と結婚に至った、なんて信じられないですか?」


私の返しは彼にはそれなりに予想外だったんだろう。
ちょっと目を丸めた後で、「ふ~ん」と目を細め、軽く眉尻を上げて応戦してきた。


「もしかして、誰に言っても同じ反応されて、受け答えもマニュアル化した?」

「それもありますけど。一哉は派手で華やかな女性が好きなわけじゃないって言ってたので」

「『私が選ばれてなにが悪い!』って開き直ったってとこか」


私は黙ってグラスを傾けた。
味わわずにゴクッと飲み干してから、グラスをテーブルに戻す。
要さんは細めた目で私を面白そうに観察していたけれど、向かい側からグッと身を乗り出してきた。


「椿さんって、見掛けそれほどパッとしないけど、いい意味で図太いのかな。正直、他の親族からの評価を聞いて、俺、ちょっとびっくりだった」

「え?」
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