ホテル王と偽りマリアージュ
要さんは淀みない口調で私にそう説明をすると、一度言葉を切り、一哉の書斎に目線を向けた。


「万が一、君と一哉の結婚になにか裏があるとしたら……彼は社長としての資質を問われることになると思うよ」

「え?」

「だってそうでしょ。一哉は自分の部下の幸せを約束するどころか、一人の女性を不幸にしてるってことだ。そんなの、皆藤の一族が認めるとは思わないからね」


そう言って、要さんは再び私を探るように睨め付ける。


「不幸……?」


纏わり付くような視線が窮屈で、ジリジリと追い詰められる感に、私は強張る身体を竦めた。


私はよほど怯えた顔をしてしまったんだろうか。
要さんはちょっと困ったように微笑んだ。


「……まあ、俺の思い過ごしってことにしとくよ。新婚だもんね。茶番なんかじゃなくて、人前でも普通にイチャつくのも当然のことか。ごめんね、俺は独身だから、そういう感覚わかんなくて」


気分を害したフリをして、一言くらい言い返すべきだったと思う。
なのに私は要さんの言葉に本当に怯んでいて、なにを言っていいのかわからず黙り込んだ。


だって私たちの結婚が契約だとバレて、一哉が社長になれない事態になったとしたら、私は……。


その時、書斎のドアが大きく開いた。
助かった気分で勢いよく顔を上げると、中から一哉が出てきた。
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