だから今夜も眠れない
オープン時の忙しさが一段落した所で、

私は団体窓口を閉め、鈴ちゃんに後をお願いしてクラフトスペースに向かう。


すでに初回のお客さんがちらほら席に着いていて、

ボランティアさんたちが材料の準備をしていた。


「先生!初回に材料はこれでいいですか?」


「ありがとうございます。今日はまゆを使った起き上がりこぼしですから、

接着剤と、絵具をテーブルに用意してあげてください」


私仕事は、忙しさであちこち手伝ってはいるけれど、

クラフトイベントのある日はこのスペースで講師をするのが本来の役割だ。


先生なんて呼ばれるとちょっと気恥ずかしいのだが、最近は大分なれてきた。


講師といっても、最初に大まかに説明した後はボランティアの人たちが手取り足取りやってくれる。


近くにすむボランティア登録した主婦や定年退職された人たちが手弁当をもって、

遊びがてら手伝ってくださる。


ありがたい。


お陰で私はテーブルを回って声をかけるぐらいですんでいる。


「おねいちゃんせんせえなのね。えらいね」


サインペンをもってにんまりしながら、ぐりぐりと顔?らしきものを描いている女の子は、

さっきのトイレのこだった。


「先程は、この子がお世話になった見たいですみません」


「いいえ、私は何もっ……」


といいかけて言葉が止まってしまった。


キラキラオーラをまとった王子さまが、飛びっきりの笑顔を私に向けていたから。


う、麗しすぎる!


「あの?」



絶句してパクパク釣られた魚見たいになっている私に、

困ったようにするキラキラ王子。




 
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