女の子として見てください!
だけど、店を出て車に乗り込んでからも、署に戻ってからも、翔さんはちょっと冷たい感じがした。

あんまり目も合わせてくれないし……やっぱり気のせいじゃないよね。急になんでなんだろう。


悩みながらも、お昼からずっとやっていた書類仕事をなんとか終わらせ、イスに座ったまま腕を伸ばした。


「あ、書類お疲れ様です。終わったんですか?」

飯尾くんが、コーヒーを片手に私の席までやってきて、隣の空いている席に腰をおろした。
私のために淹れてくれたコーヒーなのかと思ったけど、普通に自分で飲み始めた。ちくしょぅ。


「そういえば美桜さん、この間行ってた、バーの男性とはどうなったんですか?」

サラっとそう尋ねられて、いろんな意味で言葉につまる。

バーの男性っていうか。飯尾くんとも毎日顔合わせてますよ。なんなら今も君の斜め後ろの席でデスクワークしていますよ。と、心の中では思う。


そして。
いい感じだと思っていたけど、今は相手の考えていることが急に全然わからない……とも、思った。口には出せないけど。

そういえば私、今まで誰かのことを好きになると、課長や飯尾君にも普通に相談してたなぁ。だからこそ、この間の合コンのことやバーで翔さんと知り合ったことも、普通にふたりに話したんだけど。
でも、翔さんのことは、同じ職場で働くふたりにはさすがにまだ言えない。
本当は、相談したいけど。もどかしいな。


「うまくいってないんですか?」

飯尾くんにそう尋ねられて、私はうなだれるように首を縦に振った。


「……相手がなに考えてるのか、よくわかんない」

なにを怒ってるのかがわからない。
なんで目も合わせてくれないの?
言ってくれなきゃわからないのに、なんでなにも言ってくれないの?


悲しくなりながら私が悶々としていると、飯尾君が言った。


「相手の考えてることなんて、恋愛に限らずよくわからないもんですよ。
でも、好きな相手のことならなんでも知りたくなりますよね。
あ、そうだ。美桜さん、今日十八時上がりですよね? その人のこと、仕事終わりに食事でも誘ってみたらどうですか? その人、たしか銀行員ですよね? 銀行員なら、その人もそのくらいの時間に仕事終わるんじゃないですか?」
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