女の子として見てください!
「あ~~……」

午後二十時。
私はデスクに突っ伏しながら、盛大に溜め息を吐いた。


ダメだ。
集中できなすぎて、全然仕事終わらない。本来なら今日も十八時には上がる予定だったのに。


「美桜さん、なにかあったんですか?」

今日は宿泊勤務のために未だに部署に残っている飯尾君が、コーヒーを啜りながら私の隣のデスクに座る。
私の分のコーヒーはやっぱりないけれど、気にかけてくれるのはうれしいと思った。
でも。


「ううん、大丈夫。ありがとう」

今この部署内には、私と飯尾君のふたりきり。
大抵の人たちはもうとっくに帰っているし、飯尾君以外の宿泊勤務の人は席を外している。
だけど、職場内で翔さんのことを相談するわけにもいかないよね。


「ほんとですか? なにかあったら言ってくださいよ。美桜さんに元気がないと妙な感じがします」

「はは。ありがと」

「伊浅さんも今日様子おかしかったですよね。なんかやたらピリピリしてたっていうか。
それに、伊浅さんにしては珍しくまだ仕事終わってないんですね。宿泊勤務じゃないのにまだ帰ってないし」

確かに、いつも時間通りに仕事を終わらせている翔さんが、この時間になっても残業しているのは珍しいことだ。今は席を外しているけれど。


私が怒らせてしまったことで、調子狂っちゃってるのかな……。


誤解もあるとはいえ、そりゃ怒るよね。
私はあれだけ翔さんに好き好き言ってるのに、昨日は約束を破って、私はほかの男の人といっしょに過ごしてたんだから。



そんなことを考えながらボンヤリしていると、飯尾君が「そういえば」と別の話題を振ってきた。


「美桜さんは聞きました? 裏通りのウワサ」
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