独身一般職(37) vs 新人リア充(20)
「下風代理はずるいです…

こんなことされたら、どうしたって期待してしまうじゃないですか。

…あたし今朝、アパートの玄関を出て駐車場を歩く笠原さんを見たんです」


「…え?」


下風代理の腕の力が弱まった瞬間に、あたしはようやく身体を離して、ささっと前髪を直した。


「…付き合っているんですよね」


うつむきながらも彼の目は微かに泳いでいるように見えた。


「…そうじゃないよ。
香坂ちゃんが思っているようなものではないから」


何それ。
隠しているのだろうか。
それともあたしに気を遣っているのかな。


「…嘘つき。もうやだ…」


すると彼はまたあたしを抱きしめた。
きっと今度はその嘘をごまかすためだろう。

どっちみちあたしの想いは彼の嘘に弾き返されたのだ。


「…やめとけよ、こんなオヤジなんてさ」


行き場のない想いに、切ないを通り越して虚しくなる。

あたしはだんだんと力が抜けていった。

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