海音
年中暖かい島だけど夜の海は少し肌寒かった。
少し前を歩く健の背中を見ながら砂浜を歩く。

ふいに健が立ち止まると大きな流木に腰を下ろした。
前までなら当たり前に隣に座っていたのに、なぜか今日は出来ずに立ったままでいると

「座れば?」

健が不思議そうに私を見た。
少し間を開けて座ると、また沈黙が続く。
波の音しかしない今日は星も出ていない。
耐えきれず私から口を開いた。

「今日おしゃれしてるね」

半袖のシャツにデニム姿なんて初めて見たかもしれない。

「義兄ちゃんが着るはずだったやつ」

「そっか義兄ちゃん楽しみにしてたもんね」

「もう脱ぎたい」

「え?だってまだ何かあるんじゃないの?」

「何かって?」

「うーん告白タイム的なのとか」

「俺関係ないし」

そう言うと健はシャツを脱いで中に着ていたTシャツ姿になった。
そして脱いだシャツを私の肩にかけた。

「か、関係ないって自分が参加するって言ったんでしょ」

シャツをギュッと握りしめると健の匂いがした。

「和おじちゃんがバイト代出すからって」

「は?」

「もう金とかいいや知らない人と話すの疲れた」

バイト代って和おじちゃん一体何考えてるんだ。
健だって、それに吊られて参加するなんて!
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