海音

「訳わかんない」

「何が？」

「和おじちゃんも健も」

「俺？何で？」

「もういい何でもない！」

「実佐なんか変だぞ」

「変じゃないよ！」

「そうか？」

心配そうに見つめてくる健は毎日見てるのに今日はいつもより大人に見えた。
ずっと好きだった健が遠くに行ってしまう様な気持ちが溢れてきて、今言わないと一生言えななくなりそうだ。

「健…あのさ…」

「んー？」

「今日来た人の中に、いいなって思った人いないの？」

「はぁ？全員すげー年上なんだけど…ないない！」

健は驚いた顔をした後、笑いだした。

「実佐、大丈夫か？」

ケラケラと笑いながら私の顔を覗き込む。
私は全然笑えない。
この二日間ずっと苦しかったから。

「健のばか」

泣くつもりなんて全然なかったのに涙が溢れてきて視界を滲ませる。
さっきまで笑っていた健が急に真顔になった。

「健が誰かと付き合っちゃうの見たくない」

そこまで言って急に恥ずかしくなった。
健は黙ったまま私を見ている。

「ごめん！何でもない」

あわてて涙を拭いて立ち上がった。

「もう戻んなきゃ」