海音
来た道を歩きだそうとすると、後ろから抱きしめられた。
突然の出来事に驚きすぎて固まっていると
「俺…実佐以外好きになった事ない」
背中から伝わってくる健の心臓の音と、自分の音が同じくらいの早さで鳴り続けている。
何を言ったらいいのかわからず黙ったままの私に
「なんか言えよ」
健の呟くような掠れた声が聞こえた。
「だっだって、なんかって言われても…」
言わなきゃってわかってるのに自分の気持ちが言葉に出来ない。
心臓はもう限界かってくらい鳴り響いてる。
「実佐は俺の事どー思ってる?」
健の声は少し震えているように聞こえた。
こんな健は初めてで戸惑う気持ちと、なぜか嬉しさが込み上げてきた。
私も勇気を出さなきゃ…
「…好き」
私の声も震えていた。