エリート専務の献身愛
「やめっ……んん!」

 キスされるかと思った直前、顔を背けて力いっぱい両手で突き放す。同時に声を上げたら、乱暴に手で覆われた。

「ね、冷静に考えてよ。ここで騒ぎになったら面倒くさくない? それに、気持ちいいことして仕事もうまくいくなんて、一石二鳥じゃない」

 妖しい笑顔でそう言って、トンッと私の背中を壁に押し付けてくる。さらに、必死に突っ張っていた腕は難なく拘束された。

 手を壁に縫い付けられた状態は、誰がどう見ても完全に不利。
 それでも、強がって辻先生に鋭い視線を向け、口を開く。

「どうしてこんな……っ」
「んー。反動かな? おれたちは色々な面で縛り付けられていることが多いから、いつも窮屈で。ストレス発散のような感じ」
「は……」

 反動って! ストレス発散って! そんなの理由にならないでしょ! っていうか、認められるわけがないでしょ!

「どうせなら、楽しくストレス発散したいじゃない。城戸さんって慣れてなさそうで可愛いし、一生懸命な顔がいいよね。おれは、新薬よりも、城戸さんのほうが興味あるな」

 どんな方法でストレス解消するかは自由だけれど、勝手に人を巻き込まないでほしい! 全然理解できない。

「もう大人だし、割り切っていいことしようよ」

 辻先生が片側の口の端を吊り上げる。私の首筋にゆっくり顔を埋めようとしたときに、コンコンとノックの音が割り込んだ。

「大きな声はダメだよ? きっと、部屋を間違えているんだ」

 右手で再び私の口を塞ぐと、威圧的な笑顔を向けられる。
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